●演奏はPULLING TEETHらしさはあるものの、やはり寿々喜さんのヴォーカルが一番の変化ですよね。
寿々喜 前作からの年月を考えると、子供の顔だって変化するでしょ?みたいな。
●でも、自分が日本語で歌う日が来るなんてイメージしてました?
寿々喜 してない。歳も歳だから、そろそろいいでしょって。やってないことをとにかくやりたいから。それが日本語であり、演歌的なアプローチであり、今回は狙ったわけじゃなく、自然にやれましたよ。うまく乗るものだなって。
●1曲1曲、歌い方を変えてるんじゃないかと思うほど表情は豊かですね。
寿々喜 そうですね、父ちゃんに演歌を聴かせてもらって良かったなと。根底にはそれがあるんでしょうね。
●お父さんはどの辺の演歌を聴いてたんですか?
寿々喜 昭和40年代にテレビで流れていたような北島三郎、森進一、ビッグネームしか聞いてないですよ。
●昭和の任侠映画に出てくる俳優みたいな、セリフっぽい歌い回しがユニークで。寿々喜さんの歌声は誰にも似てませんね。
寿々喜 根が東北人だから、その差ですよ。関西人が同じことをやっても、こういうニュアンスは出せない。俺が東北人であるがゆえに、言葉と言葉の間に訛が入ってるんですよ。それは自然ですからね。なんだろ、たまに「ん」が入るんですよ。
仁 ああ~!
寿々喜 根底にあるのは東北ですよ。すげえ意識したと言えば、シンプルなメロディと少ない言葉数にしようと思ったくらいですよ。
泰治 歌詞カードを読んだ時に、多少なりとも寿々喜さんの人間は知ってるので、普段言ってるような言葉だなと。ほんとにウソのない言葉を歌詞に書いてるな、という印象は受けました。かっこつけてるわけでもなく、説教するわけでもなくみたいな。
●演奏面で変化ありました?
泰治 プレイ面は変わらないですね。自分のやりたいことはわかってますから。今回はエンジニアも前の人と同じだし、信頼関係もありますからね。
仁 演奏はやりやすかったです。俺は前のPULLING TEETHを知らないし、前のドラムと同じことをやってもしょうがないですからね。まあ、百戦錬磨の人と一緒にやってるので気持ちは楽でした。
寿々喜 照井君とは今回初めて曲作りからアルバムまで一緒にやったけど、俺がいままで曲を作ってきた中で一番完成度が高いですね。
仁 これ太字で書いてください(笑)!
寿々喜 俺が思い描く曲の像を100%形にしてくれましたからね。逆に照井君ここまでやるのかい!って、ビックリしました。
仁 ははは、嬉しいっすね。
寿々喜 案外、いままでの曲はアレンジを煮詰めるまでいってなかったのかなと。今回は背中の痒いところまでかけました。
●作品のテーマ自体は震災の影響が色濃いですよね?
寿々喜 それはもうハズせないですね。震災前後の自分の生活を含めて、歌にしたいなと。英語詞でやってる時は辞書で言葉を調べて、叫ぶような感じでしたからね。いざ自分の言葉でやるとなると、自分で責任が取れるようなものしか書けない。そうなると、自分の生きてきた時間の流れしか反映できなくて。48年生きて・・・若いものに言えることもあるし、同年代のおっさんたちにもわかる言葉があるんじゃないかと。曲の並び的には自分の年表になってるんですよ。最後の3曲は別ですけどね。
●どの歌詞にも寿々喜さんがいる、という印象です。
寿々喜 そうっすね。バレたらかっこ悪いから。自分の身の丈に合ったことしか書けないなと。
泰治&仁 はははは。
寿々喜 「俺は年収、何千万~♪」とか歌っても、バレちゃうから。
仁 それ歌います(笑)?
全員 ははははは。
●とにかく、寿々喜さん歌声と歌詞、両方とも素晴らしいです。味わい深いというか。
仁 いいですよね。
寿々喜 ありがとうございます! 言い忘れたけど、いままでの歌声だと、ライヴで1時間もたないんですよ。いつか普通の声で歌えるようになったらいいなあという気持ちもあったんで、日本語詞で歌い回す感じなら、20曲1時間ぐらいのライヴもできるかなと。
●ライヴも想定に入れて。そして、1曲目「和を背負う」からインパクトがありますね。JUDAS PRIESTの「Painkiller」のごとく激しい2バスで幕を開けますね。
寿々喜 俺はPRIEST一枚しか聴いたこないんで、「Painkiller」はわからないんだけど(笑)。その2バスは何からヒントを得たかと言うと、花火大会なんですよ。
●へぇー、そうなんですか!
寿々喜 まさに和なんですよ。毎年、隅田川の花火に観に行ってるんで。冒頭19時からエッ!と思うくらい花火がドドドドドッと打ち上がるんですよ。それが2バスの連打みたいだから、絶対2バスだけのパートを入れようと。
仁 思ったよりも速かったですけどね(笑)。
●それは説明を聞かないとわからなかったです。
寿々喜 あれは花火なんですよ!
泰治 初めて知りました(笑)。
●内容は刺青のことを歌ってますよね。
寿々喜 等身大の自分を歌詞に反映させた。それだけですね。背中に洋物のタトゥーを入れてたら、「俺のタトゥー」という曲になったのかもしれない。刺青は自分の人生にはハズせないんで、歌のテーマに相応しいかなと。